ウィザードの撮影が一年間続くということで、撮影所からそう遠くない場所に引っ越してしばらく経った時のこと。
いつものように最寄りの駅から家に帰ろうとすると、駅前に「ビッグイシュー」を売っているおじちゃんが一人立っていました。
「ビッグイシュー」というのはホームレスの方が社会復帰を目指すために販売している雑誌で、割と社会派な内容でおもしろく何度か買ったことがありその日も何気無しに買ってみることに。
「こんにちは、最新のやつ一冊下さい」
「はい、ありがとうございます。300円です。」
「いつからここでやってるんですか?」
「今週からやってます。」
「そうなんですね。」
「はい、またお願いします。」
その次の日から土日と雨の日を除いておじちゃんは毎日そこに立ち、僕も半月に一回発売されるその雑誌をそれからもそこで買うようになりました。
そんなある日、僕がまた新しく出たやつを買おうとするとおじちゃんはこう言ってきました。
「そんなにいつも買ってくれて、お金は大丈夫なの?」
「大丈夫」
「えー、だって学生でしょ?」
「一応、学生だけど、一応働いてるから大丈夫」
「えー、働いてるの?」
「うん」
「なにやってるの?」
「何だと思う?」
「えー、売れないホストとかじゃないの」
「売れないホストではない」
「じゃあなに?」
「売れない役者」
「へー、役者なんだー、何にでてるの?」
「今は仮面ライダーやってるよ」
その時、「じゃあ見てみるよ」、とか言ってはいたもののお金が貯まるとすぐにパチンコで使っちゃうらしくなかなか見てくれないおじちゃんでしたが
それ以来、僕が仕事終わり電車で帰ってくるといつも笑顔で「おかえりー」と言ってくれる仲になりました。
時には寒空の中、駅前で一時間も立ち話をしたり。何の偏見もなく、ただの小僧として僕を見てくれるおじちゃんは、当時、新しい仕事現場に住環境に少なからず不安を抱えていた僕を救ってくれる存在にまでなっていました。
そしてついに。
「あ、おかえりー」
「あれ、今日は遅くまでやってるね」
「お金使っちゃったからね」
「またパチンコいったの?」
「いや、昨日仮面ライダー見に漫画喫茶行ったんだよ」
「うそ・・・」
「したら、駅伝でやってなかったんだよ」
「そうなんだよ、昨日だけ駅伝で放送がなかったんだよ、言ってくれればよかったのにー」
それに懲りてしまったのかそれからしばらくは「もう見ない」と言っていたおじちゃんでしたが、その一ヶ月後、また漫画喫茶に見に行ってくれたのです。
「こうやって変身すんだべ」とか言って変身ポーズをしてくれたり、「俺はウォータースタイルが好きだな」とか「リンコちゃんかわいいな」とか興奮してその話をしてくれました。
去年の1月に書いた『嬉しいこと』というブログの嬉しいこととは、実はそのことでした。
最近は、別の場所でも雑誌を売るようになりおじちゃんと最後に会ったのはウィザードの最終回を迎える前でしたが、
あの日から毎週欠かさずにパチンコ代を削って漫画喫茶に行き、おじちゃんはウィザードを楽しんで見てくれました。
以上。僕達に何が出来たのか分かりませんが、一人のおじちゃんの希望にはちょっとはなれていたのかなぁ、という話でした。
『仮面ライダーウィザード』を応援してくれた皆さん、本当にありがとうございました。
更新が遅くなってしまい大変申し訳ないと思っています。
ウィザードは、決して全てがハッピーな終わり方をしたわけではありません。皆、辛く悲しい想いをしたと思います。
でも、それでも、絶望を乗り越え、希望を見いだし、前に進んでいくというお話でした。
この作品を通して、皆さんのなかで少しでも前に進むきっかけになったり希望を見いだすきっかけになっていたら嬉しいです。
いかがでしたでしょうか?
製作発表の時に僕は、「深く長く愛される作品にしたい」と言いました。
皆さんがどう感じてくれているのか僕には分かりませんが、僕としてはこれからも深く長く愛すべき作品だと今なら胸を張って言えます。
それは、間違いなく皆さんの存在があったからです。
『仮面ライダーウィザード』を応援していただき、本当に本当にありがとうございました。
白石隼也
![$白石隼也オフィシャルブログ「a piece of cake」Powered by Ameba]()
いつものように最寄りの駅から家に帰ろうとすると、駅前に「ビッグイシュー」を売っているおじちゃんが一人立っていました。
「ビッグイシュー」というのはホームレスの方が社会復帰を目指すために販売している雑誌で、割と社会派な内容でおもしろく何度か買ったことがありその日も何気無しに買ってみることに。
「こんにちは、最新のやつ一冊下さい」
「はい、ありがとうございます。300円です。」
「いつからここでやってるんですか?」
「今週からやってます。」
「そうなんですね。」
「はい、またお願いします。」
その次の日から土日と雨の日を除いておじちゃんは毎日そこに立ち、僕も半月に一回発売されるその雑誌をそれからもそこで買うようになりました。
そんなある日、僕がまた新しく出たやつを買おうとするとおじちゃんはこう言ってきました。
「そんなにいつも買ってくれて、お金は大丈夫なの?」
「大丈夫」
「えー、だって学生でしょ?」
「一応、学生だけど、一応働いてるから大丈夫」
「えー、働いてるの?」
「うん」
「なにやってるの?」
「何だと思う?」
「えー、売れないホストとかじゃないの」
「売れないホストではない」
「じゃあなに?」
「売れない役者」
「へー、役者なんだー、何にでてるの?」
「今は仮面ライダーやってるよ」
その時、「じゃあ見てみるよ」、とか言ってはいたもののお金が貯まるとすぐにパチンコで使っちゃうらしくなかなか見てくれないおじちゃんでしたが
それ以来、僕が仕事終わり電車で帰ってくるといつも笑顔で「おかえりー」と言ってくれる仲になりました。
時には寒空の中、駅前で一時間も立ち話をしたり。何の偏見もなく、ただの小僧として僕を見てくれるおじちゃんは、当時、新しい仕事現場に住環境に少なからず不安を抱えていた僕を救ってくれる存在にまでなっていました。
そしてついに。
「あ、おかえりー」
「あれ、今日は遅くまでやってるね」
「お金使っちゃったからね」
「またパチンコいったの?」
「いや、昨日仮面ライダー見に漫画喫茶行ったんだよ」
「うそ・・・」
「したら、駅伝でやってなかったんだよ」
「そうなんだよ、昨日だけ駅伝で放送がなかったんだよ、言ってくれればよかったのにー」
それに懲りてしまったのかそれからしばらくは「もう見ない」と言っていたおじちゃんでしたが、その一ヶ月後、また漫画喫茶に見に行ってくれたのです。
「こうやって変身すんだべ」とか言って変身ポーズをしてくれたり、「俺はウォータースタイルが好きだな」とか「リンコちゃんかわいいな」とか興奮してその話をしてくれました。
去年の1月に書いた『嬉しいこと』というブログの嬉しいこととは、実はそのことでした。
最近は、別の場所でも雑誌を売るようになりおじちゃんと最後に会ったのはウィザードの最終回を迎える前でしたが、
あの日から毎週欠かさずにパチンコ代を削って漫画喫茶に行き、おじちゃんはウィザードを楽しんで見てくれました。
以上。僕達に何が出来たのか分かりませんが、一人のおじちゃんの希望にはちょっとはなれていたのかなぁ、という話でした。
『仮面ライダーウィザード』を応援してくれた皆さん、本当にありがとうございました。
更新が遅くなってしまい大変申し訳ないと思っています。
ウィザードは、決して全てがハッピーな終わり方をしたわけではありません。皆、辛く悲しい想いをしたと思います。
でも、それでも、絶望を乗り越え、希望を見いだし、前に進んでいくというお話でした。
この作品を通して、皆さんのなかで少しでも前に進むきっかけになったり希望を見いだすきっかけになっていたら嬉しいです。
いかがでしたでしょうか?
製作発表の時に僕は、「深く長く愛される作品にしたい」と言いました。
皆さんがどう感じてくれているのか僕には分かりませんが、僕としてはこれからも深く長く愛すべき作品だと今なら胸を張って言えます。
それは、間違いなく皆さんの存在があったからです。
『仮面ライダーウィザード』を応援していただき、本当に本当にありがとうございました。
白石隼也
